2008.04.25(金)

遺族らに本当の「癒し」の日を――JR福知山線事故から3年

 安全よりも利益第一主義に狂奔したJR西日本が107人もの尊い命を奪った福知山線脱線事故から3年がたちました。
 今年も僕はできるだけ黒に近い色のネクタイを締めて出勤しました。

 これほど重大な事故を引き起こしたJR西日本に課せられている責任は何か。
 この「日々雑感」でも毎年のべてきたとおり、遺族・負傷者をはじめこの事故で傷ついた人々の心にふれる、心からの反省・謝罪と、二度とこのような事故をおこさないという取り組みです。
 この二つを実行するために欠かせないのが、事故をもたらした本質的な要因を自ら解明し、それを率直に示して自らを批判することです。

心に響くお詫びとは

 今年の追悼慰霊式でも山崎正夫社長は、遺族に対してお詫びの言葉を繰り返しました。
 しかし、言葉は丁寧でも、事故の本質的な原因は何かということをのべ、反省するということはありませんでした。
 山崎氏は、「事故当事者としてなぜこのような悲惨な事故をひき起こしたかについて、自ら振り返り掘り下げて考えてみた中で」との言葉に続けて、「組織間の連携や社員間のコミュニケーションの不足、知らず知らずのうちに現状を良しとする風潮が芽生えてきていた」とのべました。

 これらは、個別的な事象、現象ではあっても、本質的な原因ではありません。
 こうした言葉を並べて「反省」してみせても、遺族たちの心には響かなかったのではないでしょうか。

 懲罰的な「日勤教育」の見直しや、過密ダイヤの見直し、ATSの設置を含めた安全投資の増加など、始められている努力はあります。
 しかし、JR西日本に公共交通機関としての使命感、責任感がまだ少しでも残っているなら、安全よりも利益を優先する経営体質が根本にあったということ、そこから安全投資の遅れ、過密ダイヤの設定、運転士をはじめ社員らに対する締め付けが生まれていたということを率直に認めて、これをきっぱり否定した新しいJR西日本への再生の道を歩むことを宣言すべきではないでしょうか。
 本質的な原因を曖昧にしたまま、言葉だけで「反省」をのべても、遺族の悔やんでも悔やみきれない気持ち、怒り、悲しみは癒されず、歯がゆい思いが募るのではないでしょうか。
 そういう意味で、JR西日本は今もなお遺族たちを日々苦しめ続けているといっても、いい過ぎではありません。

弊害噴き出す新自由主義

 この悲劇の根底に、もっと大きな問題、国、政権党、財界の責任がよこたわっていることも指摘しなければなりません。
 国鉄をJRに分割民営化し、利潤を追求する本質をもつ企業にしてしまったことは、この事故と深くかかわっています。
 JR西日本の安全軽視、利益優先の体質がそこから生まれたことは明らかだからです。

 国や自治体の公共サービスを民営化、民間委託したり、企業の参入を認め、何でもかんでも資本の利潤追求の対象にしようとする市場化・営利化路線、民間解放・規制緩和を柱とする新自由主義路線は日本でも1980年代から進められてきました。
 今、この路線の狙いが次々に実現するや、その弊害があらゆるところで噴き出して、この路線に対する疑問の声がわきおこっています。
 もうからないからと、地域から病院をなくしていいのか。郵便局をなくしていいのか。農産物の価格を市場任せにしていいのか。常に犠牲者となる国民、庶民が、この流れを押し返さなければなりません。

1047人の声は正しかった

 福知山線事故と表裏一体といってもいいのが、国鉄の分割民営化・JR発足時に、反対していた国労、全動労などの組合員を差別してJR採用から排除し、1047人を解雇したJR採用差別事件です。
 「民営化すれば、もうけ優先、安全軽視につながる」。分割民営化に反対した労働者らがあげた声は正しかったといわざるをえません。
 分割民営化がこうした声を抑え付けて強行され、JRが生まれたという経過が、JRの体質を物語っています。

 事件から21年、差別された労働者らは塗炭の苦しみを味わいながらも、自分たちは間違っていないという誇りと、仲間どうしの連帯や支援を力にして頑張ってきました。
 1月23日の全動労訴訟東京地裁判決では、JRへの採用名簿を作成した国鉄が不当に差別を行ったことが明確に認められ、不法行為・不当労働行為があったことが断罪されました。
 政府は、司法の裁きを厳粛に受け止め、採用差別事件の解決のため、当事者らが求める交渉の席につくべきです。

 自民党、財界が進めてきた間違った国づくりを転換させることが、福知山線事故の被害者の悲しみ、JR採用差別事件の被害者の苦しみを無にしないということ、国民一人ひとりの幸せともつながっているのではないでしょうか。

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コメント(4)

同感です。
この事件は、安全第一ではなく「もうけ第一」のJRの姿勢が明らかになりました。
最近、どの分野でも儲かれば何をやってもいいという風潮がもてはやされてきましたがそのために多くの国民が犠牲になりました。
この路線を転換できるのは我々国民一人ひとりの選挙での1票ではないでしょうか。

Hosoさんごぶさたです。
Hosoさんの意見に私も同感です。
JRになってから、公共性よりも利益を大事にする姿勢が目立ってきたと思います。エキナカのお店を増やして集客力を高めているのもそうですね。
その一方、地方の駅では窓口をなくして、かえるくんというインターホンでやりとりしてきっぷを購入する機械を取り入れています。
先日、電車内で上着を忘れてしまい、電話で問い合わせました。が、最寄り駅ではなく忘れ物センターにつながり、応対が良くなかったです。しかも、最近は最寄り駅の電話番号を電話帳に載せていないのです。
時間をおいて最寄り駅に問い合わせたら、ちょうど届いていたので無事に手にする事ができました。その駅も、駅員さんが少なく、対応が忙しそうでした。

福知山線の事故は、公共性が失われるとどんなことになるか、を示したものだと思います。

>>ツヨポン

安全を置き去りにして利益を追求するのは公共交通機関として恥ずべきことだね。
日本の少なくない大企業がモラルを失い、その結果国民が被害を受けている。
これはなんとかしなくてはいけないね。政治の責任も大きい。

>>Nogさん

どれもこれも僕が日頃から気にしていることばかりです。

JR東日本のSuicaビジネス・エキナカ路線には非常に腹が立ちます。先にやることがあるはずです。
みどりの窓口の廃止、かえるくん化は東北でも問題になっていました。
最寄り駅の電話番号を電話帳に載せていない問題も、僕が東北にいた時に気づき、とても不便に感じました。駅によっては載せているところもありますが。

いずれも、利用者の利便性が切り捨てられていますね。

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Hoso: >>Nogさん どれ
(遺族らに本当の「癒し」の日を――JR福知山線事故から3年)
Hoso: >>ツヨポン 安全を
(遺族らに本当の「癒し」の日を――JR福知山線事故から3年)
Nog: Hosoさんごぶさた
(遺族らに本当の「癒し」の日を――JR福知山線事故から3年)
つよぽん: 同感です。 この事件
(遺族らに本当の「癒し」の日を――JR福知山線事故から3年)
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