2007.07.05(木)

2007年春ドラマ批評

 春ドラマ、ファースト・インプレッションで取り上げた7本すべて見てしまいました。
 それだけ今期は面白い作品が多かったといえるでしょう。
 「セクシーボイスアンドロボ」、「特急田中3号」という2本の傑作が生まれました。

 それぞれ全く異なる方向性を向いているようでいて、実はこれらの作品には前を向いて歩いていこうとする人間の姿や、家族、仲間とのつながりを描き、希望を感じさせるという共通項が度合いの差こそあれあったように感じました。

 特に「セクシーボイスアンドロボ」と「夫婦道」の2作品は、大人にしか絶対に理解できないであろうよさがあったと思います。

プロポーズ大作戦 月曜、21:00、フジテレビ系 ★★★★
 幼なじみの吉田礼(長澤まさみ)にずっと思いを寄せながら、それを伝えられないまま礼と別の男性との結婚披露宴を迎えた岩瀬健(山下智久)がタイムスリップして過去を変えようと悪戦苦闘。

 何回ものタイムスリップによっても礼との関係を大きく変えることはできず、披露宴の友人あいさつで初めて素直に礼に向けて自分の気持ちを告げた健。「この言葉にたどりくつのに時間がかかってしまったけど…、結婚おめでとう」と振り絞るシーンは胸に迫るものがあった。
 実は健と同じくらい過去を悔いている礼にも自分の気持ちに正直になるよう妖精(三上博史)が促すことで、物語の最後で健と礼が結ばれる…という結末となった。

 「過去を変えようとする」という形をとって、自分を変えることの難しさ、大切さ、自分を変えることができた時に初めて新しい素敵な世界が開けるということをこのドラマが伝えたように感じた。
 男女5人の高校時代から続く友情が爽やかだった。山下、長澤が好演。共演の平岡祐太、栄倉奈々、濱田岳もとてもよかった。
 健と同じように不器用で、誠実な、礼の婚約相手・多田先生を演じた藤木直人もいい。最終話、自分の気持ちに迷っている礼を促すために、「賭け」といいながら実は両手に袖のボタンを握っていたシーン(「やっぱり!」と思った)が印象的だった。

セクシーボイスアンドロボ  火曜、22:00、日本テレビ系 ★★★★★☆
 今期の最高傑作。あの「のだめ」以来の満点★5つ超え!
 ロボットオタクの青年・ロボ(松山ケンイチ)と、七色の声とずば抜けた聴力を持つ女子中学生・ニコ(大後寿々花)が様々な事件に巻き込まれ、解決してゆくという冒険活劇。

 シュールでファンタジックな設定、ストーリー展開の中に、人生や日々の生活の中で大切にしたい価値観が熱くこめられていた。
 一言でいうなら、人間に対する信頼、ヒューマニズムの追求ともいえ、今の腐朽した日本社会へのメッセージと受け取れた。

 最も素晴らしかったのは第2話「ごぼ蔵」だ。
 村上淳演じる強盗犯・後藤に脅されて伊豆へ車を走らせるロボとニコ。伊豆で後藤はある女性のお腹のあたりに向かって泣きながら、だらしない人生を送っていた自分の過去を詫びた。
 後藤は、亡くなった恋人から移植された腎臓に向かって詫びていたのだった。そのために強盗までしていたのだ。
 自首する後藤を見送りに警察署の前まで来たロボとニコ。「ここで」と別れを告げようとする後藤に、「いや、あと5歩」というロボ。「人に優しくされるのって、いいな」といって後藤は警察のドアをくぐっていった――。

 松山と大後の演技が類例なきほど秀逸。僕は今まで松山のことを知らず、このドラマを見てから映画「デスノート」も見たが、彼がなぜこれほど人気なのかわかった。
 大後はまだ13歳だが、どう言葉でいい表せばいいのかわからないほどの高い演技力を披露した。とりわけ、自分にセリフがなく、ロボら他の人物が話している場面での表情、目の使い方などを見ると、彼女が「子役」などという範疇をとうに抜け出して、すでに一流の女優になっていることを思い知らされる。
 演技力の点ではもうすでに日本を代表する女優。明日NHKの朝ドラヒロインや大河の主役、フジ「月9」の主役になっても大丈夫だ。むしろ、大後の才能のむだ遣いにならないような上質な作品の制作が求められるだろう。

 DVD購入決定。今後、松山と大後の活躍からも目が離せない。
 共演した浅丘ルリ子、岡田義徳もとてもよかった。

夫婦道 木曜、21:00、TBSテレビ系 ★★★★☆
 武田鉄矢と高畑淳子の夫婦役は、これほど息の合った組み合わせは見たことないくらいだった。
 「何も事件が起きない、家族の日常」を描くという前宣伝のわりには、結構事件の連続ではあった(笑)。

 武田演じる製茶業の主人の、品質の高いお茶づくりに傾ける情熱や、さまざまなできごとを通じて確かめられ、深まる親の子への愛情、家族の絆が描かれた。
 笑いあり、涙あり、一服の美味しいお茶のようなほっとさせるドラマだった。

わたしたちの教科書  木曜、22:00、フジテレビ系 ★★★★
 一人の女子中学生・藍沢明日香(志田未来)の転落死をめぐり、弁護士・積木珠子(菅野美穂)が、いじめを隠蔽する学校の体質とたたかった。

 「当校にいじめはない」と言い張る副校長(風吹ジュン)、教師に対する「指導力不足」のレッテル張り
、1学級の生徒数も多く、業務に忙殺されて生徒と向き合えない教師たち。教育現場の現状の一端が批判的に描かれた。
 これらの問題は、長年の自民党政治のもとでの教育行政がもたらし、教育基本法の改悪や安倍内閣の施策によってますます酷くされようとしている。
 文字通りタイムリーなテーマを取り上げた意欲作となった。

特急田中3号  金曜、22:00、TBSテレビ系 ★★★★★
 鉄道ファン、鉄道趣味を正面から取り上げた、おそらく史上初のドラマ。鉄道オタクとして、まずこのことに拍手を送りたい(笑)。 
 鉄道の知識や鉄道オタクの生態をとらえた演出なども、事前の予想を上回る出来となった。そのあたりはエントリー「鉄オタに追い風は吹くのか(6)」を参照してほしい。

 鉄道オタクたちの鉄道への情熱と、進路や仕事、人間関係で模索する若者のエネルギー、成長とをうまく重ね合わせた青春ドラマにうまく仕上げたことは、少々驚きだった。
 主要登場人物である、田中一郎(田中聖)、花形圭(塚本高史)、桃山誠志(秋山竜次)、目黒照美(栗山千明)、渋谷琴音(加藤ローサ)、小島理子(平岩紙)の人物像が素敵だった。
 それぞれ、弱さも持ち、挫けそうにもなりながら、前に向かっていく強さもあった。
 互いに誠実に向き合い、友情や愛情を深めていく彼、彼女らは、本当にこんな6人がいたらいいなと思わせた。

 田中一郎の大ボラ吹きは、不安と暗中模索の裏返しでもあった。家族と仲間を大切にし、困っている人を助ける彼のキャラクターは気持ちよかった。

 印象的だったのは第9話のラストで、田中と照美がベッドから転げ落ちて偶然キスしてしまうシーン。
 二人でベッドに腰掛け、田中が照美の涙をそっとぬぐうのだが、そのぬぐったものが脱ぎ捨てた自分の靴下だったことに気づいた田中が慌てて隠そうとし、照美が「何を隠した」と揉み合った末…のできごと。
 転げ落ちて唇を重ねるというのだから、さぞ何回も撮影を繰り返したか、別に撮ったものを組み合わせたかと思いきや、2カットでOKを出したというから驚きだ。
 靴下と気づいた直後の田中の慌てぶりの演技は非常に素晴らしかった。全編通じて「たったひとつの恋」に続く名演で、もはや田中聖は数少ない僕の好きなジャニーズタレントとなった(笑)。

 この作品もDVD購入決定。

ライアーゲーム  土曜、23:10、フジテレビ系 ★★★★
 このドラマを見た最大、唯一の理由は戸田恵梨香が主演であることだ(笑)。
 序盤は今一つな気がしたが、「少数決」など、人々の心理的な駆け引きと欲望のぶつかり合い、欲望にとらわれた者たちの見境のなさが描かれ、見応えを増していった。

 登場人物の中でただ一人、「みんなが助け合えば、誰も苦しまないじゃないですか」という神崎直(戸田)の主張は、物語の最後で、人を騙す人間の中にも辛うじて残っていた人間らしい心に響いた。
 「正直者が馬鹿を見る」「人は常に争い、互いを蹴落とす」という通念へのアンチテーゼを示したものだった。

 無邪気で誠実な神崎を戸田が好演。元天才詐欺師で神崎を助ける秋山深一を演じた松田翔太と併せ、配役がぴったりだった。

冗談じゃない! 日曜、21:00、TBSテレビ系 ★★★
 年の離れた妻の母が、昔の恋人だったことがわかるというシチュエーション・コメディ。
 それほど深みはないが、難しさを感じずに楽しめる作品だった。

 僕が子どものころから「トレンディー俳優」として活躍している織田裕二と、そのころ生まれた上野樹里が夫婦役というところに感慨深いものがあった(笑)。

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コメント(2)

こんばんは、Hosoさん。
共感の笑いとともに拝読しました^^

「セクロボ」は、松山ケンイチ、大後寿々花はじめ本当に見事な配役、脚本でしたね。
良かったのは、やはり「ごぼ蔵」でしょう。
「日本にはこんなすごい俳優がいて、こんなドラマをつくれるんだ」と、驚きとともに嬉しくなりました。
印象的で好きなセリフは、「幸子」のラストで地蔵堂の社長が言った「私は、ときどき、幸せ」です。
第一話を見逃したのが悔やまれます^^;

「特急田中-」も良かった。俳優陣の演技も光っていたし、何より鉄道の魅力の一端を教えてくれたことに感謝したいと思います。
どちらの作品も、生涯記憶に残る作品になる気がします。

>>まかろにさん

いつもありがとうございます(^^
全く同感ですね。本当に、こういうドラマが作れるということ、うれしいですね。
原作漫画も気になりました。

「私は、ときどき、幸せ」。確かに心に残るせりふです。
この作品は、観る側に色々考えさせるものですね。
第1話の獅童の三日坊主もよかったですよ。再放送に期待ですね。

それから、記事にとても大切なことを書き忘れました!
エンディングテーマの「ひとつだけ」、このドラマが毎回生み出す余韻にとてもマッチしていたと思います。
やっぱりいいドラマというのは何から何まですべて揃うものなんですよね。


「特急田中3号」がまかろにさんに鉄道の魅力を伝えたことに、僕も感謝します(笑)

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