「南九州市」──新たな「馬鹿地名」の誕生
鹿児島県南部の川辺(かわなべ)町、知覧町、頴娃(えい)町の3町が来年3月に合併するそうです。新しくできる市の名称が昨日、決まったそうです。
その名は「南九州市」。この数年の大合併劇で、土地の固有性、特定性、歴史性などを踏まえない、きわめて稚拙な新自治体名が激増していますが、今回もその一つに加えられそうです。
「南九州」というのは、鹿児島と宮崎を主とした九州南部を指す呼び名だと思います(もっとも、福岡生まれの僕でもあまり聞いたことのない呼び名ですが)。
なのに、九州南部の一部である鹿児島県のほんの一部の町が合わさって「南九州」と称してしまうのだから、個性がありません。
これは余計な話ですが、「南九州大学」という大学が宮崎市や宮崎県高鍋町にキャンパスを持っています。国立病院機構の南九州病院は鹿児島県の加治木町にあります。ややこしいことになりそうです(九州大学が福岡にあるくらいだから大丈夫?<笑>)。
おそらく、この3つの町を統一的に呼べる名称がないのでしょう。
合併協議会で新市名の最終候補に残った呼び名にそのことが反映しています。残っていたのは、「南薩市」「薩南市」「平和市」などという、惨憺たるありさまでした。
「○○の南のほう」という呼び名を付けるしかないという苦しさが伝わってきます。
「平和市」なんていう、抽象名詞を冠した「地名」が最終候補に残ったというのは、まあ全国の合併協議会で何度も繰り返されてきたことではありますが、協議会委員の、知性、教養、地理と歴史に関する知的水準の低さを物語っています。
この3町の合併後の市名を付けるのに苦労するということは、そこに合併する必然性がないということの反映でもあると思います。
実際、知覧町は以前は枕崎市と合併協議をしていたのです。「ちらん枕崎市」という新市名まで決まったのですが、その後協議が破綻しました。
そもそも、昨今の大合併劇が、自民党政府によって上から事実上強制的に押し付けられたものです。
各種公共料金は上がり、サービスの水準は低くなり、住民と行政の距離は遠くなり…と、住民にとって百害あって一利なしなのが「平成の大合併」です。
もし、合併で住民のくらしがよくなったというところが全国に一つでもあれば教えてほしいです。
一連の合併で、既に全国に今回の「南九州市」のさらに上をいく「馬鹿地名」が生まれています。今、日本地図を見ると、情けない「地名」が目に入り、なんだか虫食いでぼろぼろにされてしまったような感があります。
合併は住民のくらしを困難にさせただけでなく、歴史性を持つ美しい地名を表舞台から消してしまっています。
今回の「頴娃」、「知覧」もそうであり、九州人として残念です。
今まで新地名問題についてははらわたが煮えくり返る思いを持っていて、いつかもっとまとまったものを書こうと思っていますが、とりあえず「南九州市」のニュースに接して簡単に書いてみました。
【関連リンク】
●南九州(wikipedia)
●川辺郡(wikipedia)
●南薩3町「南九州市」に 地元の予想覆し圧勝 /鹿児島(「毎日」)
●市町村合併 新市名は「南九州」/南薩3町(「南日本新聞」)




コメント (10)
僕の町でも1市5町村が昨年合併しました。対等合併といいながら実際は吸収合併です。吸収された町の方々は「何一ついいことがない。負担ばかり押しつけられた!」「さらに過疎化が進む。地域活動への補助金が削除された」など不満が爆発しています。
当時の合併推進派の理由としては「財政難だから」「合併しないとわが町だけ取り残される」など脅しを言うだけで合併したらこうなるというビジョンを何一つ示せませんでした。一体誰が「財政難」や「過疎化」を生み出したのか!!と言いたい。
hosoさんの言うとおり、地域の文化が次々と壊されています。東北に住んでいても、新しい地図を買わないと何処だかわからないほどです。
合併には何のメリットもありません。
by ツヨポン | 2006.12.23(土) 11:45 |返信
日時: 2006.12.23(土) 11:45
私の町は合併して霧島市になりました。このネーミングも舐めているんですが、やはり南九州市ってのも候補に挙がりましたね。ただし、北九州市がこけたので縁起が悪いということで却下されましたが。
by 匿名 | 2006.12.24(日) 17:29 |返信
日時: 2006.12.24(日) 17:29
Hosoさん、こんばんは^^
頴娃久虎も悲しむね。
by みつたけ | 2006.12.25(月) 23:13 |返信
日時: 2006.12.25(月) 23:13
>>ツヨポン
本当に、合併を押し付けた政府・財界の罪は重いね。
羽黒、櫛引、温海の自治体名が消えたことも残念だ。
>>霧島市の匿名の方
コメントありがとうございます。
「霧島市」はまだいいほうではいなでしょうか。全国にはもっと悲惨な自治体名が生まれています。
霧島連峰そのものが、宮崎・鹿児島県境に位置するので、宮崎側からの懸念はなかったのでしょうか。
もっとも、以前から「霧島町」があったわけですが、この町名の妥当性にさかのぼって検討しなければいけないことかもしれませんね。
そちらでも「南九州市」が候補にあがったとは、いかにそれが無個性な名称であるかを示していますね。
>>みつたけくん
「頴娃」は難しい読みだよな。
地名と氏名、どちらが先なんだろうね。
by Hoso | 2006.12.27(水) 15:06 |返信
日時: 2006.12.27(水) 15:06
こんにちは、検索してたらふと気になったので。
一応実家は川辺町です。
>おそらく、この3つの町を統一的に呼べる名称がないのでしょう。
実は……川辺がこの地域の呼称として(頴娃を除けば川辺郡なので)最も適切なんです。頴娃と知覧の影に追いやられがちですが。ただ、市名を決める際「三町の名前は使わない」と言う前提があったので使われなかった(というかそれなら知覧市だったろうな)ようですけど。
さらに遡れば阿多(薩摩半島南部一帯の呼称)という地名があり、私はこれにすべきだったと思っています。地元には歴史に詳しい人がいないのだろうか?と疑うしかありません。
まあ、せめて名前負けしない市になればいいなあ……と淡い期待をしています。
by 大望 | 2008.01.29(火) 01:43 |返信
日時: 2008.01.29(火) 01:43
>>大望様
コメントありがとうございます。
地元の方からのコメントはとてもありがたいですし、以前の記事へのコメントも大歓迎です。
その地域のことについて僕はほとんどわからないのですが、やはり川辺を市名にするのが最も妥当だったのではないかと思いますね。
阿多というのは、かつてあった郡名なんですね。少し調べたところでは、今の日置市の一部と「南さつま市」(これも問題のある市名)の一部のあたりを指すようですが、川辺や知覧を含む地域の呼称になりうるんでしょうか…?
by Hoso
| 2008.01.30(水) 20:08 |返信
日時: 2008.01.30(水) 20:08
私は昨年までは大分にいましたから、まだあまり地元のことがよくわからないんです、実家があるとはいえ、ずっと住んでいたわけでもありませんから。だからこそ知りたいと思うわけで、「南九州」と言うよくわからない名前になることを聞いた時はもう、びっくりしました。親戚も「南九州」には反対だったようですね、合併自体はどうか知りませんが。
そうですね……鹿児島湾の形成の中で仮想されている火山がありまして、指宿近辺にあったものを阿多カルデラと呼んでいるそうです。そして確か、川辺氏が治めるまでは一帯を阿多と呼んでいた……と覚えているのですが、私が覚え間違えているのかも知れません。また調べ直してみますね。でもおっしゃる通り、薩摩半島の大部分を占めていた地名なので、今の「南九州市」の範囲だけには使えないと言えそうではあります。さらなる大合併でもあれば別なのでしょうが……。
余談ですが、父は薩南が良いと言っていました。そういう名前の高校があるそうで、阿多についてはあまり良い印象を(病院を思い出すらしくて)持っていないそうです。この「南薩・薩南」は「南さつま」と紛らわしいので候補から外されたそうです。
確かなところでは川辺が最も良い名称であろうことは間違いありません。ただ、元々指宿と合併するはずだった頴娃が、それをけって川辺・知覧に来てしまったところにも問題があったみたいです。そもそも合併自体が問題だと思いますけど。
大分にいたときも「東九州市」の話が一時出ていたのですが、そちらは無くなったようですね。地元の歴史を隠すようなことはなんとか止めさせたいものです。
by 大望 | 2008.01.31(木) 01:56 |返信
日時: 2008.01.31(木) 01:56
>>大望さん
「阿多」は指宿のあたりまで及ぶのですか。そうなると、大望さんもおっしゃるとおり逆に今回の市域だけを指す地名としては少し不適切になってしまいますね。やはり川辺しかありませんね…。
「東九州市」の動きもありましたね。いずれにせよ、個性に乏しい自治体名は嘆かわしいですよね。
それでも、まだここは可愛いというか、ましなほうですね。全国には「さくら市」「みどり市」といった最悪の自治体名がありますので。
by Hoso
| 2008.02.03(日) 22:11 |返信
日時: 2008.02.03(日) 22:11
私は現在長崎に住んでいますが、数か月前までは頴娃町に住んでいました。
父が頴娃町の役所勤めだったので耳にはさんだのですが、当時の頴娃町は人口や年齢層こそ問題であったものの、収益に関してはそこそこを維持しており、合併のメリットはなかったどころか、デメリットばかりだったが、指宿よりはましということで(指宿はほとんど破綻経済)仕方なく合併したそうです。
名前に関しても「南九州市」というのは半ば思考放棄気味に決められたらしいです。
合併の意図としては「知覧茶」というブランドがありますが、市町村単位では生産量日本一(ソースが古いので現在はどうか不明)の頴娃町と提携することでさらに発展をさせようという知覧の強い意向があったようです。
そうした半ば強引かつ無理やりの合併だったために、教育や行政でいろいろと齟齬が生じているようです。
因みに対策として、今年から三町の公務員を入れ替えて交流を深めるという方策が採られたようですが、田舎の公務員というのは大概が地元に住んでいるので、職場が極端に遠くなったなどの問題も生じているようです。
以上の文章はあくまで個人的なソースと判断によるものですので気分を悪くされた方はすいません。
長文で失礼しました。
by TG09 | 2009.06.17(水) 12:12 |返信
日時: 2009.06.17(水) 12:12
>>TG09さん
コメントありがとうございます。
当該地域の方からのコメントは説得力があり、とても貴重でありがたいです。
市町村合併が百害あって一利なしだということを、「南九州市」のケースで具体的に示してくださり、本当にありがとうございます。
by Hoso
| 2009.06.17(水) 23:40 |返信
日時: 2009.06.17(水) 23:40