先日、映画「バルトの楽園(がくえん)」を観てきました。
この映画は、第一次世界大戦で日本と戦い、その捕虜となったドイツ軍兵士らが、徳島県鳴門市にあった収容所で、日本で初めてベートーヴェンの交響曲第9番を演奏したという実話をもとにした感動の物語。
板東俘虜(ふりょ)収容所では、所長松江豊寿の人間的な運営方針により、所内で自主的で多彩な活動が許されていました。兵士らが、もともとの職業や技術を活かして、パン・菓子づくり、家具づくり、土木作業、印刷・新聞発行などをしていたことには驚きと感動を覚えます。
僕は2002年の夏に収容所のあったこの地を訪れ、資料館で当時の資料に接したことを「君住む街へ」のページで紹介しています。
映画は、題材にした実話があまりに感動的でドラマチックなおかげで(笑)、心温まり胸を打つ作品になっています。俳優陣は大変豪華で、演技は見ごたえがあります。
フィクションも交えれられていると思いますが、元パン職人がパンをこねながら本当の自分を取り戻した喜びに涙するシーンや、会津出身の松江が幼い頃、戊辰戦争で会津藩が薩長政府に頑強に抵抗するも敗戦し、辛酸を嘗めさせられたことを振り返るシーンは、物語に厚みをもたせます。
ただ、随所に物足りなさ、残念な部分もあります。パン職人の話を含め、エピソードの描き方が少し浅く、数を絞ってでももう少し深く描いてほしかったこと。それから、とても残念なのは、物語の核である「第九」の演奏を準備する捕虜たちの様子や心情のきめ細かい描写が足りず、あっけなく演奏シーンにいってしまった印象がありました。
また、捕虜たちの演奏シーンの音を、カラヤン指揮のベルリンフィルの演奏を使ったため、演奏が明らかにプロのものらしくなってしまったことはリアリティに欠ける感じです。これだけ素晴らしい実話を題材に制作した映画なので、かえすがえすもこれらの点が残念です。
世界平和の思想にもつながる「歓喜の歌」、「第九」の日本初演が、このような形で行われたことは、平和を考える上でも、日本・ドイツの友好の上でも素晴らしいことです。この映画でその事実がもっと広く知られてほしいと願っています。