尼崎でおきたJR福知山線の脱線事故は、死者100人を超す空前の大惨事になってしまいました。
「列車が車と衝突して脱線。20人以上が病院に収容された」との第一報には「死者が出なければいいが…列車の状況は深刻そうだ」と心配していました。みるみるうちに、予想できないほどの深刻な被害が明らかになっていきました。熱狂的な鉄道ファンとして、鉄道利用者として、事故関連の報道に釘付けになっています。
僕自身、車窓の眺めが好きで、特にローカル線では先頭車輌に乗ることがよくあります。その先頭車輌はマンションの中に突っ込み、埋まりました。もしこんな事故に遭遇したら、どんなに鉄道好きな僕も列車に乗りたくなくなるでしょう。
今回は都市圏の通勤路線でおきた重大事故。40年前の国鉄鶴見事故に次ぐ犠牲者が出てしまいました。通勤、通学客の不可欠の足として、また、旅へ向かう人々の期待を乗せて走り、僕のような鉄道ファンの視線を浴びる鉄道車輌が、クレーンで持ち上げられるどころかパワーショベルでボロボロに解体され、まさに鉄屑となって撤去されている──。しかもそこには夥しい犠牲者。こんな映像は見るに堪えません。
事故発生直後から容易に想像できたことですが、やはり事故の背景にJR西日本の安全軽視、効率と利益追求の体質があることが日に日に明らかになってきました。同社の安全軽視体質は、2002年に東海道本線塚本─尼崎間の線路付近で活動していた救急隊員を特急が轢き殺した事件など、今に始まったことではありません。
今回も、阪急などとの集客競争のため、過密ダイヤ、1秒単位での遅延報告と、定時運行を守れなかった運転士への見せしめ的なペナルティや責任追及という実態が明らかになっています。ATSの整備状況、ステンレス製の207系車両の軽さ、脆弱性、脱線防止レールの未整備、若い運転士の単独乗務など、問題点は多数浮かんでいます。
事故の原因は、時間の遅れを取り戻そうと、若い運転士が追い詰められて速度超過し、カーブで車輪の浮き上がりが生じて転覆脱線したとの見方が強まっています。 ミスをした運転士の責任は確かに重いものがありますが、より構造的なJR西日本の体質が徹底的に追及され、変えられなければなりません。
JR西日本は驚くほど早い段階で「レール上の粉砕痕」の存在を発表し、「置き石」の可能性を強く示唆しました。事故調査委員会の調査により、置き石の可能性はほぼ否定されました。これで、いかにも責任逃れをしようというJR西日本の姿勢が明らかになりました。JR西日本には恥を知れといいたい。
JRは、西日本だけではなく、グループ全体が同じような問題を抱えていると見られます。新幹線の開通に伴って並行する在来線の経営から手を引き、利用者と地元に過大な負担を負わせる、人員削減で都市部の駅ホームにも駅員がいなくなり転落事故にも対応できない、地方では駅の無人化を進めて利用者、付近住民の利便性、治安上の安心を置き去りにする、サービス向上を怠って安易に寝台特急を廃止する…などなど、許せないことばかりです。
JRの経営陣、そもそも国鉄を分割民営化させた自民党、財界の責任は重い。国民のサービス後退につながることが明らかな郵政民営化を「JRも民営化してサービスがよくなった」などとバラ色に描く議論にも批判を向けなければいけません。
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